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とけちゃうよお・・・ [LivlyIsland]

相変わらず毎日暑いです。
溶ける様な気がする。あたしが。

しばらくまた何も書いてなかったので、某SNSの方にアップしてあったやよかな小咄をアップしに来ました。

とりあえず、夜宵と奏の日常編はこんな感じです。
ちょっと他の方のお子さんとも絡めそうな雰囲気なので、今後が楽しみで仕方ありません。
奏達はうちのこの中では独立キャラなので、他のお子さんと絡むきっかけが殆どないんですよね・・・。
奏はあまり人と接触しない職業だし、夜宵は裏家業(闇医者)してるので・・・。
闇の中で活動していらっしゃる方で、普通のお医者さんに見せられない様な怪我をした時はどうぞ夜宵の事も思い出してあげて下さい。

つ〜わけで、小咄〜。


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「あれ?まだいたのか?」


屋敷の隣に建つ塔で祈りの歌を捧げて戻って来た奏が意外な物を見たかの様につぶやいた。
いつもならもうこの時間にはいないはずの人物がリビングでくつろいでいたからだ。
「ひどい言い草ですね…奏。それとも私がいては都合が悪い事でもあったのかな?」
わざとらしく肩を落とす振りをして、それでいて奏の反応を楽しむ様に夜宵がいう。
「別に悪いなんて言ってないだろ!何かまだ用があったのかと思っただけだ!」
奏がそっぽを向きながらそう言うのを見て、夜宵はくすくすと笑う。
実際、特に奏に何か用事があって残っていたわけではなかった。
残っていた理由はただの夜宵の気まぐれ。
真夜中の、闇の中で活動する者達が夜宵の診療所を尋ねてくる時間になるまでに家に戻ればいいだけなのだ。どうせ、奏の家をすぐに出て帰ったとしても家に着いたらすぐ寝てしまうのだから少しだけ睡眠時間を削って奏と過ごしたって何も問題はない。
それに、くるくると変わる奏の表情を見ているだけで夜宵は疲れが吹き消されるような気がするのだ。睡眠と奏とどちらをとるかと言われたら間違いなく奏をとった方が夜宵にとって有意義だった。
「奏様、お茶が入りましたので夜宵様とご一緒しては?」
そう言って使用人兼、ボディガードの黒ムシクイ、鐵(クロガネ)が奏に座るよう促した。
「まあ、いいや。あ、鐵、昨日焼いてくれたクッキーまだ残ってる?」
夜宵と向かい合わせの席に座るのを確認し、鐵が『あります、ただいまお持ちします』といってその場を離れた。


鐵の入れてくれたお茶と昨日焼いたクッキーをほおばりながら、奏がクッキーの入った籠を夜宵に差し出した。
「ほれ、美味しいんだぞ。鐵の焼いたクッキー」
鐵は夜宵が奏のために置いたムシクイだった。
夜宵は四六時中奏の元にいるわけではない。奏が急に具合が悪くなった時に夜宵にすぐ連絡が取れる様に、危険な存在が近づいた時に奏を守る様に、と夜宵が命令し奏の家に置いている存在だった。
「私は鐵にコックの役目をしろと命令したつもりはないんだが…」
「オレも、したつもりはないんだけどなあ…」
お互い不思議そうにお茶をすする。
『何か甘いお菓子が食いたい』と言った事は確かだったが、鐵に焼けと命じた記憶は奏にはなかった。発言から数時間後、厨房のある方の扉を開けたら甘い香りが漂っていたのだ。
何が出来るのかと好奇心で厨房を覗いたら専門のコックではなく鐵がオーブンの前でいつもの様に無愛想な顔をして立っていたのだ。
「あの時はほんっとびっくりしたぜ〜」
その時の事を思い出しながら奏が笑う。
それからと言うもの、ケーキが食いたいと言えばケーキを、団子を食いたいと言えば団子を、鐵が自分で調理して奏に出すのだった。
「見た目と違って意外と器用なんだなって思った」
ニコニコと笑いながらそう言う奏に、夜宵はちょっと面白くなさそうな顔をして言う。
「おや、私への評価とはえらい違いがありますね。鐵の事は素直に褒めますが、私の事はそんな風に褒めてくれた事などありませんよねえ…」
「だっ…だって、お前はいつもセクハラばっかりするだろ!」
「セクハラって言いますが、ちゃんと診察してるじゃないですか。その証拠に奏が具合を悪くした事なんて一度もないじゃないですか」
「そりゃそうだけど!でも、診察するところの他にもいろいろ触ってくるじゃないか!」
「私は奏の喉専門の医者というわけではないんですよ。専属の医者ともなれば奏の心身の状態も細かく把握してないといけないのでね」
真っ赤になって怒る奏に、夜宵はすねた様にそう言うとその視線を窓の外の方へ向けた。
夜宵から言わせれば『奏がそうやって可愛い顔をして怒るからついいたずらしたくなる』というのが本音なのだが、それをあえて言わずに、ずっと窓の方を眺め、奏から視線をそらし続けていた。
いつまでも視線を合わせようとしない夜宵にしびれを切らしたのか、奏がばんっ!とテーブルを叩きながら立ち上がった。
「お前がオレの身体の状態を把握してなきゃいけないのはわかった!だけどっ…!」
威勢良くそこまで言ったあと、急に小声で
「…だけど、尻とか、余計なところまで触るのは勘弁して…」
と、耳まで赤くしてもじもじと奏が言う。
それでも目をそらしたままの夜宵の目前に、奏がクッキーを一枚差し出した。
「もう!いつまでそうやってんだよ!大人げない!」
頬を赤らめて睨みつける奏を見ると、夜宵はひとつ、ため息をつく。
クッキーでも食べ機嫌を直せと言いたいのだろう。単純でわかりやすい、奏の性格。
人の事は大人げないと言うけれど、だからといって奏が大人であるとは到底思えない。
気に入ってる、好きな子にほどちょっかいを出したくなる事なんて子供でもわかってるはずなのに、奏はそれに気づいてない。
幼い頃から教会で育ったからなのかそうでないのか。奏は恋愛感情という物にあまりにも鈍感だ。
「はぁ…セクハラも奏の身体がいろんな意味で正常に働くかどうかの診察の手段なのになあ…」
と、夜宵は残念そうにつぶやくと、『あ、そうだ』と何かを思いついたかの様に途端に表情を変え、ニコニコと微笑みながら言った。
「『夜宵。はい、あ〜ん♥』ってやってくれたら考えなくもないですよ?」
夜宵が自分の方をむいて、機嫌が直ったのかとほっとしたのもつかの間、言葉でのセクハラに奏がわなわなと震え出す。
むんずとクッキーの入った籠をつかみ、
「もう全然反省してねえのな!あんたになんてクッキーやんねえ!!!!!」
胸に抱え込む様にして凄い勢いでクッキーを食べ始める。
時折むせ込みながらムキになって食べる奏を夜宵は楽しそうに見つめ、合間にお茶を差し出すのであった。


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お疲れさまでした〜。

出来たら次はそれぞれの過去編とか、やってみたいと思います。
それぞれ、結構重い過去があるので、頑張ります。
ああ、あたしが溶けちゃわないでいたら,って事で!
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